ロールモデル

梅田望夫 ウェブ時代をゆく より

ロールモデル思考法とは、
ただ「誰かみたいになりたい」「こんな職業につきたい」という
単純な願望から1歩進み、自分の志向性をより細かくて定義していく
プロセスである。
世に溢れる「人の生き方」や「時間の流れ方」に興味を持ち、
それを自分の問題として考える。
外界の膨大な情報の無限性を恐れず、自分の志向性と波長のあう信号を高速でサーチし続け、
自分という有限性へマッピングする。
波長の合う信号をキャッチできたら、
「時間の使い方」の優先順位を変えてコミットして、行動する。
身勝手な仮説でもいいから、これだと思うロールモデルにのめりこんでみる。
行動することによって新しい情報が生まれ、新しい人々と結びつき、
また新しいロールモデルを発見することになる。
ロールモデルを発端に行動し、さまざまな試行錯誤をする中で、
意欲や希望の核が生まれ、世界は広がっていくだろう。
「好き」な対象さえはっきりすれば、
ネットはそれを増幅してくれもする。
個の成長とともに、ロールモデルはどんどん消費し新しくしていけばいい。
どんな偉大な人物であろうと、自分のために消費してしまえばいい。
探し、試し、客観視し、必要なら卒業し、動く。
人生の局面に応じたたくさんのロールモデルの引き出しを持ちながら、
それを灯台代わりに生きていくのである。





村上春樹 夢を見るために 毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集 1997-2009より

小説に関して、僕は師と言えるような存在はいないんだけど、
ジャズのマイルズ・デイヴィス、彼が僕のロールモデルなんです。
彼のやり方は、新しい手法を取り入れると、
その都度どんどん煮詰めて行く。
そうやってネジを締めるだけ締めると、またバッと広がって別のシステムに行く。
バップを煮詰めるだけ煮詰めると、突然クールにいって、クールを煮詰めると、次はハードバップ
それが終わると、今度はモード、次に新主流派、そしていくぶん神秘的なところに行ったかと思ったら、
あるとき突然エレクトリックに行っちゃう。
エレクトリックを煮詰め切ったらヒップホップ。
そうやって、1945年から80年頃までの35年間、
彼はつねに第1線でやってきた。
なぜそれができたかと言うと、つねに後ろは振り返らず、
新しいものをインテイクし、それを煮詰め、煮詰め切ったところで新しいインテイク、
というダイナミズムを維持していたから。
マイルズ・デイヴィスの素晴らしさは、新しいものの取り入れ方のダイナミックさと
ネジの締め方の厳しさ、その二つにあったんです。





■ほぼ日 今日のダーリン 糸井重里 2010.10.29


「大人になる前に悪いこがやっていることは、
 実は、大人がふつうにやっていることを、
 子どものうちにやっているだけ、という場合が多い。
 ただ、ませていただけなんですよ」と。
 その説を聞いたときには、
 なるほどなぁ、と思いました。

 まったくその逆のことを思ったんです。
 「若いのにすごいなぁ、と言われるような人って、
 もっと年をとってからなら、ふつうの人ができることを、
 若くしてできてるだけ」という場合が多いんじゃないか?
 そう思ったんです。

 「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎればただの人」
 ということばを、みんな知ってるから、
 「できる子ども」に関しては、親以外はだいたい、
 「まぁ、ただの人になるよ」と流してくれる。

 でも、二十歳過ぎてから
 「こいつ、すげぇ」なんて言われてると、
 ほんとに「すげぇやつ」扱いされちゃうんだけどね。
 その後、三十、四十と長く生きていくうちには、
 「昔、ちょっとよかったんだよね」なんて
 失速しちゃう場合だって多いんですよ。

 大学生のときにまぶしかった先輩だとか、
 新人のころに「かなわないなぁ」と思えた同僚、
 そういう人の行く先にも、さらなる分岐があるんです。
 ませてただけだったり、一時期の貯金で派手だっただけ、
 なんて人たちを、老人たちは無数に見てきてます。
 
 ぼくがいまお会いしてる年長者たち、
 長いこと「すげぇ」をやってきている人たちは、
 過去の成績だか業績をいちいちリセットしては、新しい時代の新人のようにやってきてるんですよねー。
 親からもらった才能が人より余計にある、とか、
 他人より早熟だった、なんていう程度では、
 そんなに何十年もやってはいけませんって。
 いま、あんまり輝いてない人も、
 ひょっとしたら「晩熟」なだけかもしれませんぜ。



ロールモデル
全く違う人達が、たぶん同じことを感じ、考えている。
いろいろ読んで、いろいろな人や情報に出会い、考え、感じ、楽しむ。
いつでもでも、誰からでも、どんなものからでも学び、教えあう。
いつまでも、いつまでも、柔らかい自分でいたい。