「物語はからだにきく」と「雪かき」
村上春樹の「1Q84」を購入するつもりで本屋に行ったのに、
それではなく、タイトルと著者 内田樹氏の本にひかれて
読んだ本。
なかなか「1Q84」に到達しない。。
タイトルもおちゃめな「村上春樹にご用心」は、
村上春樹氏へのノーベル文学賞のバーチャル祝辞から始まって、
村上春樹氏について、内田樹氏がblogなどで書いた短い文章を集めた1冊です。
もっとも、内田樹ファンであるわたしは、
ただただ村上春樹氏にむけた内田樹的愛情みたいなものを
同時にたのしめて、2倍お得な本です。
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: アルテスパブリッシング
- 発売日: 2007/09/29
- メディア: 単行本
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「すぐれた物語は身体に効く」という文章が本文中にあります。
物語れる人の言葉が、なぜか心に残るのはそのせい。
物語の言葉はたしかに身体に入り、増幅されることを実感する。
物語は繋がっているんですね。
いろいろなものは、つながりをもちながら深まっていくことを
ここでも知ることとなりました。
内田氏本文中より、村上氏翻訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」から…
「キャッチャー」仕事をする人間がこの世界には必要だ、ということもその一つだ。
「キャッチャー」はけっこう切ない仕事である。(中略)
感謝もされず、対価も支払われない。でもそういう「センチネル(歩哨)」の仕事は誰かが
担わなくてはならない。
世の中には、「誰かがやらなくてはならないのなら、私がやる」というふうに考える人と、
「誰かがやらなくてはならないんだから、誰かがやるだろう」というふうに考える人の2種類がいる。
「キャッチャー」は第1の種類の人間が引き受ける仕事である。
ときどき、「あ、オレがやります」と手を挙げてくれる人がいれば、人間的秩序はそこそこ保たれる。(中略)
適正を論じる以前に、彼らは世の中には、「そんな仕事」が存在するということさえ想像できないからである。
「ダンス・ダンス・ダンス」では、
雪が降ると分かるけれど、「雪かき」は誰の義務でもないけれど、
誰かがやらないと結局みんなが困る種類の仕事である。
プラス加算されるチャンスはほとんどない。
でも人知れず「雪かき」をしている人のおかげで、
世の中からマイナスの芽(滑って転んで頭蓋骨を割るというような)が少しだけ
摘まれているわけだ。
私はそういうのは、「世界の善を少しだけ積み増しする」仕事だろうと思う。
これが、「雪かき」や「どぶさらい」仕事。
最近の内田氏のblogにもこの言葉があり、現在の商品経済の形、そしてこれからの経済の形にも触れている。
愛読者が多いこのblog、twitterのTLでは、「内田研究室 記事」へのつぶやきが
流れてきます。とくに「こびとさん」UP時のTLは「こびとさん」だらけでした。
この「こびとさん」という言葉は、すっかりいろいろな人たちの中で生きていて
これも「身体に効くすぐれた物語」のひとつなのではと思います。是非ご一読を。
商品経済から贈与経済へ
こびとさんをたいせつに
内田樹の研究室 blogより